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法定相続人の相続順位

4 法定相続人の相続順位

⑴ 血族相続人の系統

まず血族相続人の系統について相続の順位を説明します。

① 第1順位:被相続人の直系卑属(韓国民法1000条1項1号)

第1順位の血族相続人は被相続人の直系卑属です。直系卑属ということは子、孫、ひ孫が直系卑属として相続人になるということです。日本の場合は、第1順位の血族相続人を「子」と規定していて、韓国民法の場合は、子も含めた「直系卑属」を第1順位の血族相続人として規定しています。そこで、子と孫がいる場合にその相続の順位はどうなるかですが、これについては、「同順位の相続人が数人の時には最近親を先順位とし同親等の相続人が数人の時には共同相続人になる。」と規定しているので(韓国民法1000条2項)、子が1人でもいれば子だけが相続人となり、孫は(本位)相続人にはなれません(代襲相続でなく、固有の相続権に基づいて相続する場合を本位相続といいます。つまり、この場合の孫も代襲相続人として相続人になることはあり得ます(韓国民法1001条))。

判例は第1順位の相続権者である被相続人の妻と子の全員が相続開始後に相続を放棄したら孫が相続人になるとしました(大法院1995.4.7.宣告94タ11835判決)。相続放棄は代襲原因ではありませんので、この場合の孫による相続は直系卑属としての本位相続です。この場合に、立法論として代襲相続を認めるべきであるという考えもあります。孫(直系卑属)としての本位相続と代襲相続では、相続分が異なってくることもあるので、このような立法論も議論の実益があるのです。

例えばAには、妻Xと子BとCがいて、Bには子Dがいて、Cには子EとFがいるとします。この場合、Aが死亡して、その後、妻XとB、Cが全員、相続を放棄すれば孫のD、E、Fが第一順位の直系卑属として相続人になり、その相続分はそれぞれ3分の1です。ところがDとEFがそれぞれの父B、Cを代襲相続するのであるとすれば、Dの相続分は2分の1、EFの相続分は各4分の1となります。このような場合に、本位相続か代襲相続かによって差が出てくるのです。

直系卑属は自然血族であれ法定血族であれ区別はなく、実子であれ養子であれ、婚姻中の子であれ婚姻外の子であれ関係がありません(ただし婚姻外の子については父による認知がなければなりません)。韓国親族法においては1990年12月31日までは継母子関係や嫡母庶子関係が法律上の母子関係として認められていましたので、母子の相互間で相続人になることができましたが、1991年1月以降は相続人になることはできません(1990.1.13.附則4条)。大法院2009.10.15.宣告2009タ42321判決は、改正前の民法施行当時、継母の母親が死亡した場合、継母がその前に既に死亡していたならば、前妻の出生子が死亡した継母の順位に代わって代襲相続をすることになるとしました。

養子は実父母だけでなく養父母に対しても相続権を有します。しかし親養子(親養子とは、親養子縁組制度に基づいて認められる養子のことをいい、親養子縁組とは、日本法にいう「特別養子縁組」と類似の制度をいいます。)は養子縁組の成立により実父母との嫡出親子関係が断絶するので実父母を相続することはできません。

② 第2順位:被相続人の直系尊属(1000条1項2号)

第2順位の血族相続人は被相続人の直系尊属です。第2順位の相続人が複数人のときには最近親を先順位として、また、親等が同じ直系尊属が複数人のときには共同相続人になります(1000条2項)。養子が死亡した場合、養父母と実父母すべてが相続権を有します(大法院1995.1.20.付94マ535決定)。しかし親養子の実父母は親養子を相続できません。

③ 第3順位:被相続人の兄弟姉妹(1000条1項3号)

第3順位の血族相続人は被相続人の兄弟姉妹です。日本民法900条4号但書(「ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。」)のような規定はありませんので、兄弟姉妹の間で全血(父母の両方を同じくするきょうだい)・半血(父母の一方を同じくするきょうだい)による区別はありません。

④ 第4順位: 4親等以内の傍系血族(1000条1項4号)

第4順位の血族相続人は被相続人の4親等以内の傍系血族です。4親等ということは、自分から見ておじ、おばの子(いとこ)や甥、姪の子まで(自分の相続についての)相続人になり得るということです。

⑵ 配偶者相続人

次に配偶者相続人について説明します。配偶者は常に相続人になります。血族相続人として直系卑属がいるときは直系卑属と同順位で相続し、直系尊属がいるときは直系尊属と同順位で共同相続人となります。配偶者が血族相続人と共同相続人になるのはそこまでです。血族相続人として直系卑属又は直系尊属がいないとき、すなわち兄弟姉妹が血族相続人となるような状況のとき(被相続人の直系卑属も直系尊属も既に死亡していたり相続放棄していたりするとき)には、配偶者がいれば配偶者が単独相続人になります。すなわち、配偶者がいるときには、兄弟姉妹は相続人になることができないということです(韓国民法1003条1項)。この点は、被相続人の兄弟姉妹と配偶者が共同相続人になり得る日本法の規定と異なる点と言えます。もう一つ日本法との違いをここで指摘しておきますと、次に述べる代襲相続に関してですが、被代襲者(相続開始以前に死亡または欠格した直系卑属または兄弟姉妹)の妻は日本法では代襲相続人となれませんが、韓国法では、被代襲者の妻も他の代襲相続人と同順位で共同相続人となり、又は他に代襲相続人がいなければ妻が単独相続人となり(韓国民法1003条2項)、代襲相続権が認められています。

なお、配偶者相続人としての配偶者は有効な法律関係上の配偶者でなければなりません。婚姻が無効であれば相続権がありません。取り消し得る行為でも取消判決があるまでは配偶者が死亡すれば生存配偶者は相続人になります。重婚者が死亡した場合、後婚が取り消されない限り前婚者も後婚者も2人とも相続人となります。ただし、この場合の2人の配偶者の相続分については1人のときの相続分の2分の1と見る下級審判決がありますが(光州高等法院1995.10.6.宣告95ナ209判決)、日本法と違って、配偶者の相続分を相続財産全体の一定比率と定めていない韓国民法の解釈論としては疑問があるという見解もあります(この見解によりますと、配偶者2人で1人分ではなく2人分を認めるということになります)。

大法院1996.12.23.宣告95タ48308判決は、重婚者が死亡した後に重婚を原因として後婚が取り消された場合でも婚姻取消の遡及効を認める根拠がないということを理由として、後婚配偶者が重婚者の財産を相続した後にその後婚が取り消されたという事情だけではその前に行われた相続関係が遡及して無効になるとか、またはその相続財産が法律上の原因無く取得したものと見ることはできないとしました。しかし、婚姻取消は元来遡及効がありませんが、配偶者が死亡した後に婚姻が取り消された場合にはその死亡時に取消により婚姻が解消されたものと見るべきものであるから後婚配偶者には相続権がないと解釈すべきものであるという考え方もあります。ただし、婚姻当事者が取消事由があることを知らなかった場合には失踪宣告の取消に関する29条2項を類推適用して、その相続財産を、その受けた利益が現存する限度で返還する義務があると見るべきだという見解もあります。

⑶ 相続人資格の重複について

祖父Aの子B、その子C(Aから見て孫)がいるとして、AがCを養子にした場合、Bが先に死亡しその後でAが死亡したとすれば、Aを被相続人とする相続に関してCの相続分はどうなるのでしょうか。

そもそもAにB以外に子供がおらず、C以外に孫もいないのであれば特に問題にはなりません。原則としてCひとりがAの相続財産を全部相続するからです。 それでは、C以外にも相続人がいる場合はどうなるでしょうか。CはAの子(養子)としての相続分とBの代襲相続人としての相続分の2つを主張できるのでしょうか。この場合の相続人資格の重複は、韓国の学説上、大体において認められていると言われています。

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