Loading

ブログ

韓国判例紹介(日本における相続放棄の韓国内での効力)

日本における相続放棄の韓国内での効力
事件番号 大邱高等法院 2015.4.22.宣告2014ナ2007判決

今回ご紹介する裁判例は日本で行われた相続放棄の申述の韓国内での効力に関するものです。
1.事実の内容は次の通りです。
「(1)亡E(以下「亡人」と言う)、彼の相続人らである原告らと被告は全員大韓民国の国籍を持つ状態で日本に居住してきた。亡人は2012.3.29.死亡したが、亡人の財産は大韓民国と日本両方に存在していて、亡人の相続人としては妻である原告A、長男である原告B、長女である原告C及び次男である被告がいた。
(2)原告Cは2012.6.5.日本東京家庭裁判所で亡人の財産に関する相続放棄申告をして、原告A、Bは相続開始を知った日から3か月内に同じ裁判所で相続放棄申告期間を2012.8.31.まで延長を受けた後、その延長期間内である2012.8.27.同じ裁判所で相続放棄申告をして、上記各相続放棄申告は2012.8.8.と2012.9.13.にすべて受理された(以下「本件各相続放棄」と言う。乙第4.5.6号中)。
(3)被告はその後亡人所有の別紙目録記載各不動産(以下「本件各不動産」と言う)中別紙目目録第1、2項記載各不動産に関しては大邱地方法院2013.2.5.受付第4182号で、別紙目録第3ないし6項記載各不動産に関しては大邱地方法院ヨンチョン登記所2013.3.26.受付第9820号で各相続を原因とする所有権移転登記を終えた(甲第6号中)。
(4)原告Cは2013.7.2.に、原告Aは2013.8.6.に各日本東京家庭裁判所に本件各相続放棄を取り消す申請をし、上記各相続放棄取り消し申請は2013.10.4.すべて受理された(甲第8ないし16号中)。」

2.本件の争点は、同判決によれば4つです。
「①亡人の国内財産に関する相続関係は外国的要素がないので国際私法が適用される余地がない。②そうでなくても、国際私法第49条によれば相続に関する準拠法は死亡当時被相続人の本国法であるので相変わらず国内民法が適用されなければならない。③国際私法第17条第2項で行為地法による法律行為の方式も有効であると定めているが同じ条第5項は物権その他登記すべきである権利を定めたり処分する法律行為の方式に関しては第2項の適用を排除しているので、本件各相続放棄は本件各不動産に関しては効力がない。④たとえ本件各相続放棄が方式的には有効だとしても、その実質的成立要件は国内法を従わなければならないが、原告A、Bの場合、国内法院からの相続放棄期間を延長受けてない状態で民法第1019条が定めた相続放棄期間3か月を徒過して本件各相続放棄をした。」
   

3.これらの争点について大邱高等法院は次のとおり判断しました。
「カ.本件各相続放棄が無効か否かの可否
    1)前述のとおり亡人とその相続人らは全員大韓民国の国籍を有したまま日本に居住してきて、亡人(被相続人。筆者注)の相続財産は国内と日本両方に存在している。従って、亡人の相続関係は国際司私法第1条所定の「外国的要素のある法律関係」に該当するので国際私法に従って準拠法を定めなければならない。
     国際私法上相続に関する準拠法は「死亡当時被相続人の本国法」が原則だが(国際私法第49条)、法律行為の方式は行為地法によるものも有効である(国際私法第17条第2項)、相続放棄は身分権に関連する包括的権利義務の承継に関するもので、国際私法第17条第5項で行為地法の適用を排除している「物権そのほかに登記しなければならない権利を定めたり処分する法律行為」に該当していないとする。
     従って特別な事情がない限り原告らの行為地法により日本裁判所に申告した本件各相続放棄は有効であると言えるので、この部分に関する原告の上記2.カ.1)①、②、③(上記2の①、②、③のこと。引用者注)の主張は受け入れられない。
2)これに対して原告A、Bは、国内法院から相続放棄期間を延長が受け入れなかった状態で相続放棄期間3か月を徒過して<>本件各相続放棄は実質的成立要件を満たせず、効力がないという趣旨で主張する。
あたってみれば、民法第1019条第1項は「相続開始があったことを知った日から3か月以内に相続放棄ができるが、その期間は理解関係人等の請求により家庭法院がこれを延長できる」と規定しており、日本民法だい915条第1項も同じ趣旨で規定している。従って相続人は法院から相続放棄期間の延長を受けた場合にはその延長期間内に各相続放棄ができる。この場合、国内法院の適用対象となる相続関係においてその相続放棄期間の延長決定を国内家庭法院から受けるか、外国家庭法院から受けるかの問題は法律行為の方式に関するもので、国際私法第17条第2項により行為地法によることもできると言える。
     上記原告らが相続開始を知った日から3か月内に行為地法である日本民法に従って日本東京家庭裁判所から相続放棄申告期間の延長を受け、その延長期間内に相続放棄申告をし、その相続放棄申告がすべて受理されたのは前述のとおりである。従って本件各相続放棄はすべて有効とできるので上記原告らの上記2.カ.1)④(上記2の④のこと。引用者注)部分に関する主張も受け入れられない。」

以上

関連記事

  1. 韓国判例紹介(韓国における職場内セクハラに対する取扱いの現状)
  2. 韓国判例紹介(公認認証書を利用した電子金融取引の効力)
PAGE TOP