夫婦の一方または双方が韓国人である場合、その離婚問題に適用される法律は、日本の法律でしょうか、それとも、韓国の法律でしょうか。
まず、夫婦がともに韓国人である場合、その夫婦の離婚に適用される法律は、韓国法ということになります。それでは、夫が日本人、妻が韓国人という場合はどうでしょうか。この場合、日本人である夫が長年日本で暮らしていたという典型的な場合を想定しますと、この夫婦の離婚に適用される法律は日本法ということになります。
つまり、それぞれの夫婦の国籍や長年暮らしていた場所によって、韓国法が適用されるのか、日本法が適用されるのか変わってくるということです。しかしながら、これらは、あくまで離婚の実質的な要件の問題に適用される法律がどこの国の法かという問題です。実質的な要件の問題というのは、たとえば、合意によって離婚ができるのかといったことが典型的に問題となるでしょう。なお、日本法も韓国法も合意による離婚(いわゆる協議離婚です。)を認めていますが、これは、比較法的に見ると、めずらしいシステムと言えるものです。欧州等の諸外国では合意による離婚は認めないことが一般的です(なお、北朝鮮の法律でも、協議離婚は認められていません)。
このように、離婚の実質的な要件の問題について、どの国の法律が適用されるかが明らかになったとしても、さらに、離婚の方式ないし手続の問題は、どの国の法律が適用されるのかということが問題になりますが、これについては、離婚の方式ないし手続の問題は、その手続をする場所の法に従えば良いとされていますので、日本の役所で離婚届の提出をする場合、日本法に従えば良いということになります。
さて、それでは、韓国法ないし日本法が適用されることによって、離婚問題にどのような違いが現れるのでしょうか。
協議離婚において、日本法と韓国法で最も大きな違いは、韓国の離婚法では、家庭裁判所による離婚意思の確認が要求されるということでしょう。日本法においては、役所への離婚届の提出によって、離婚の効力が生じますが、韓国法の場合、それに加えて、家庭裁判所に離婚意思の確認を申請しなければなりません。この離婚意思の確認については、解釈上の激しい議論があるところです。どういうことかと言いますと、この確認が単なる離婚の方式ないし手続の問題なのか、それとも、離婚の実質的な要件の問題なのかということです。
単なる離婚の方式ないし手続の問題であると考えますと、日本の役所へ届け出るときは、日本法に従えば良いのだから、韓国法で要求されている家庭裁判所による離婚意思の確認などは必要ないということになりますし、逆に、この問題が離婚の実質的な要件の問題だということになりますと、家庭裁判所による離婚意思の確認がされなければ、韓国法上は離婚届は無効ということになってしまいます。
この問題については、学説上の議論がかまびすしく、また、実務の判断も固まっていませんので、離婚をしようとする当事者としては、万全を期して、離婚意思の確認の申請も行っておく必要があるでしょう。そして、これについては、韓国法によって、夫婦の双方が日本にいる場合、駐日韓国大使館ないし領事館に申請すればよいこととされており、負担の軽減が図られています。
以上のとおり、在日韓国人の離婚問題については、日本法及び韓国法の解釈上の議論が錯綜しており、複雑な様相を呈する状況となっております。
日韓をめぐる家族法問題につきましては、以下のブログもご参照ください。
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