在日韓国人相続の概観
被相続人が在日韓国人である場合、その相続問題に適用される法律は、原則として、日本の法律ではなく、韓国の法律ということになります。つまり、相続人となるのは誰かといった相続人の範囲の問題、さらに、それぞれの相続人が相続することになる遺産の割合はどの程度かといった相続分の問題などはいずれも韓国法を基準に考えるということになります。
相続に関して、日本法と韓国法で最も大きな違いは、配偶者(妻ないし夫)の相続分でしょう。例えば、夫が亡くなり、妻及び2人の子が相続人となる典型的な場合を想定しますと、日本の相続法では、まず妻の相続分は全遺産の2分の1となり、子は残りの2分の1を2人で均等に分けて、結局子の相続分はそれぞれ4分の1となります。
それに対して、韓国の相続法によりますと、妻の相続分は子の相続分の1.5倍と規定されていますので、上記の例で言いますと、結局、妻の相続分は7分の3、子の相続分はそれぞれ7分の2となるのです。
また、それぞれの相続分が明らかとなったとしても、それをどのように分けるのかという問題(いわゆる遺産分割の問題。これが相続で一番大きな問題です。)が残っています。
そして、この点についても、遺産の中に不動産がある場合、その所有関係には韓国法と日本法のどちらが適用されるのか、遺産の中に預金がある場合、預金にはどの国の法が適用されるのかといったことが大きな問題として残るのです。
特に、預金については、平成28年12月、日本の最高裁が、預金は相続人の共有になるという判断を示しましたので、預金についての日本の実務の考えが大きく変わりました。これに対して、韓国では、このような大法院(日本の最高裁に当たる韓国の司法機関です。)の決定はありませんし、預金は当然に分割され遺産分割の対象とはならないと考えられていますので、預金について、日本法と韓国法のどちらが適用されるかによって、結論に大きな差を生じさせるでしょう。
以上のとおり、在日韓国人の相続問題については、日本法及び韓国法が絡み合って複雑な様相を呈しています。
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