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日韓をめぐる家族法(婚姻・離婚・親子・親権・相続)法律相談3【相続人に行方不明者がいたら②―韓国法相続親族3】

※注意事項 下記の法律相談を作成した時期により、既に法令や判例が改正・変更されていることもありますので、実際の事案に下記法律相談を利用する時には必ず当事務所にご相談ください。下記情報を利用した結果についていかなる責任も負うことは出来ませんので、その点ご了承のうえ利用して下さい。
 
〈Q3〉
Q2と同様、韓国籍の在日韓国人である私の母が亡くなりました。相続人は父と、私を含めた兄弟3人ですが、長姉が小さい頃日本から北朝鮮へ行ったままで行方不明です。亡母の財産は、日本で銀行預金と不動産があり、韓国にも銀行預金と不動産があります。この場合、どのような手続きで相続を進めたら良いのでしょうか。
〈A3〉
日本の財産についてはQ2の質問に対する回答と基本的には同じになりますが、今回は韓国にも銀行預金と不動産があるため、手続はより複雑になります。つまり、韓国にある財産を相続承継するためにどのような手続きが必要かということが問題になります。普通に考えれば、韓国でも日本と同様に行方不明者(不在者)である姉について、失踪宣告の申立をすることになります。韓国の国際私法12条では次のとおり規定しています。
「法院(裁判所のことです)は外国人の生死が分明でない場合に、大韓民国にその財産があったり大韓民国法によらなければならない法律関係がある時、その他正当な事由がある時には、大韓民国法により失踪宣告することができる」。
 一般的には、不在者が国籍を有する国の法律、すなわち不在者の本国法に失踪宣告の原則的管轄があると考えられています。したがって、不在者である姉の本国法である韓国の法院に失踪宣告の申立をすることができることになります。韓国民法27条1項により、不在者の生死が5年間分明でない時に失踪宣告ができることになっています。この点、日本法の失踪期間は7年ですから、多少要件が緩和されています。これによって韓国で失踪宣告が確定すれば他の相続人(父と2人の兄弟)だけの遺産分割協議書等で韓国の不動産の移転登記ができることになります。また、韓国の銀行預金についても払い戻しを受けることができるようになります。失踪宣告確定前に韓国の銀行預金を下ろす必要があれば、やはり韓国でも不在者財産管理人の選任申立をして、選任された不在者財産管理人と協力をして銀行預金を下ろすことになります(韓国民法22条以下)。
 なお、韓国で失踪宣告を受けて、それが確定すれば、当該失踪宣告審判書を韓国の役所に提出して、お姉さんについて死亡の事実を記載してもらうことが出来ます。
 なお、日本の裁判所が出した失踪宣告審判の効力を韓国でも承認してもらうことができるのではないかという問題もあります。これを認める考え方もありますが、大法院の判例上はあまりはっきりしていません。また、この方法によると、まずは日本の失踪宣告をもらってから韓国の法院に日本の失踪宣告審判を承認してもらう手続をしなければなりませんので、かえって時間がかかるというデメリットがあると思います。したがって、韓国にも不動産がある時には、韓国でも失踪宣告の申立手続をした方が早く処理することができると思います。
(2012.12.13 弁護士高初輔 記述)

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