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A:相談者・在日韓国人
B:弁護士
Q:このたび私の母(在日韓国人、国籍は韓国)が亡くなりました。父はずっと前に亡くなっており、母には私を含めて4人子供がいます。全員韓国籍です。4人兄弟はいずれも結婚しており、それぞれ子供が1人ずついます(亡き母から見ると孫になります)。母が亡くなったのは今年の2月ですが、その後すぐ、3月1日に兄弟4人とも家庭裁判所で相続放棄の手続きをとりました。その後、10月になって母が借金をしていた銀行から連絡があり、母の借金を相続人の皆さんに請求しますと言うので、自分たちが相続放棄したことを言ったところ、それではお孫さんに請求しますと言われてしまいました。この場合、払わなくてはいけないのでしょうか。日本の場合、子供が相続放棄をすれば孫にまではいかないと聞いたことがありますが、韓国法の場合はどうなりますか。
なお、母の父母、つまり私たちから見て祖父母は既に亡くなっており、母に兄弟はおりません。
A:結論から言うと、韓国法の場合、あなた方兄弟は相続放棄をしているので母の借金を相続しませんが、この場合、皆さんの子供たち、つまり被相続人の孫が相続をしますので、孫が被相続人の債務を相続したことになります。
日本法では、「被相続人の子は、相続人となる」と規定されていますが(日本民法887条1項)、韓国法では、第一順位の相続人は「被相続人の直系卑属」と規定されていますので(韓国民法1000条1項1号)、孫も直系卑属として直接相続人となるからです。但し、直系卑属の中でも寸数(親等)が先の者が先順位になります。ここで、日本の場合は、相続放棄をすると、相続放棄は代襲相続原因ではないので、孫が代襲相続人になるわけではありません(日本民法887条2項)。ところが、韓国は直系卑属が相続人となっているため、先順位の子が全員相続放棄をすると、次順位の孫が相続人になります。これは代襲相続ではありません。法文上、第一順位の相続人を「子」と規定する日本法と、これを「直系卑属」と規定する韓国法とでは具体的に相続放棄をする時に孫まで相続放棄をする必要があるか否かに関して違いが生じます。
韓国法の場合の相続放棄の仕方としては、第一順位の子が全員相続放棄をした後、次順位の孫が全員相続放棄をします。その後で直系尊属がいればその者が相続放棄をし、さらに兄弟姉妹がいれば、その者が相続放棄をしなければなりません。日本法では、子供が相続放棄をすれば孫は代襲相続しないので、次は直系尊属が相続放棄をし、最後に兄弟姉妹が相続放棄をすることになります。
以上の通りなので、本件の場合はあなた方が相続放棄をした後、3ヵ月以内にあなた方の子供である孫が相続放棄をしなければいけなかったのです。
(記述 弁護士高初輔)