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A:相談者・在日韓国人
B:弁護士
A:私の両親は2人とも韓国国籍で、私達兄弟も全員韓国国籍です。母は20年前に亡くなっているのですが、今年父が亡くなりました。相続人は私を含めて兄と妹の3人です。私は現在40歳で、兄は50歳ですが、私達のおじ(母の弟)に、兄は両親の実の子ではなく、産まれて間もなく、養子にする趣旨で韓国の役所に親生子出生申告(日本の嫡出子出生届のことです)を出したと聞いています。この場合、日本の判例によると、嫡出子出生届をしても養子縁組の効力はないと聞いたことがあるのですが、どうなるのでしょうか。
B弁:確かにあなたがおっしゃるように日本の裁判所は一般的に養子縁組をする趣旨で嫡出子出生届を出しても養子縁組としての効力はないという立場に立っています。ただ、平成18年の最高裁判例があり、この場合に実親子関係不存在確認請求をすることが権利濫用であると判断される場合もあります。もし権利濫用であると判断されれば、実際上は実親子関係が認められることになるでしょう(最判H18.7.7)。ただし、あくまでも親子関係不存在確認請求が権利濫用とされる場合があるということであって、嫡出子出生届をしたとしても養子縁組の効力は認められないのが原則であり、したがって、日本法によれば親子関係はないと判断されるのが原則となります。
しかし、皆さんも亡くなった両親も国籍が韓国ですので、その親子に関する法律関係については韓国法(判例も含めて)が適用されることになります。したがって、韓国法でどのように考えられているかが問題です。韓国では大法院の判例上、養子縁組をする意思で親生子出生申告した場合、養子縁組の実質的要件がすべて備わっている時には養子縁組の効力を認める立場をとっています。さらに、親生子出生申告をした当時には養子縁組の実質的要件が備わっていない(例えば法定代理人の代諾がない等)時には養子縁組の効力が発生しないが、後に子が15歳に達して(すなわち自ら養子縁組当事者になることができる年齢になって)、無効な養子縁組を追認すれば、その養子縁組は遡及的に有効になるという立場をとっています。したがって、養子縁組の実質的要件が備わっていれば、あなたのお兄さんも両親の養子として親子関係が認められ、相続権が認められることになると思います。
なお、日本でも韓国でも、父親が婚外子について嫡出子出生届(親生子出生申告)を出した場合には、認知の効力が認められます。
(記述 弁護士高初輔)