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弁護士による韓国法律情報9-2 【韓国労働法(退職給与保障法)2】

※注意事項 下記の韓国法律情報を作成した時期により、既に法令や判例が改正・変更されていることもありますので、実際の事案に下記韓国法律情報を利用する時には必ず当事務所にご相談ください。下記情報を利用した結果についていかなる責任も負うことは出来ませんので、その点ご了承のうえ利用して下さい。
 
前回は、使用者が労働者に対して、毎月の給料の中に退職金として一定の金員を付加して支給するという約束のもとに、これを支払っていた場合、そのような退職金分割支払の約定は有効かという問題を扱った判例をご紹介しました。その判例では、退職金分割支払約定は無効であると判断されたのですが、当該ケースでは退職金分割支払約定は無効であり、そのような無効な約定に基づく支払は不当利得として会社側は労働者に対し返還請求できるとされました。そこで今回は、この不当利得返還請求権と労働者の会社に対する賃金債権を相殺で処理することができるかという論点についてご紹介します。
前回の判例と同じ判例ですが、その中で制限的に相殺が認められました。すなわち、労働者の経済生活の安定を害するおそれがない場合には、使用者は不当利得返還請求権を自働債権として労働者の賃金債権や退職金債権等を相殺することができるが、一方、民事執行法(韓国)上、退職金その他これと同様の性質を有する給与債権の2分の1に該当する金額は差押禁止債権と規定されているので、韓国民法第497条によりその分は相殺できないと判断されました。
大法院2010.5.20.宣告2007タ90760全員合議第判決(退職金分割支給約定事件)の判決要旨(2)は次の通りです。
「(2)(多数意見)旧勤労基準法(2005.1.27.法律第7379号により改正される前のもの)第42条第1項本文によれば、賃金は通貨で直接勤労者にその全額を支給しなければならないので、使用者が勤労者に対して有する債権で勤労者の賃金債権と相殺をすることは出来ないのが原則であり、これは経済的・社会的従属関係にある勤労者を保護するためのものであるところ、勤労者が受ける退職金も賃金の性質を有するものであるから、やはり同様である。ただし、計算の錯誤等により賃金を超過支給した場合に、勤労者が退職後、その再就職中受け取ることの出来ない賃金や退職金を請求したり、勤労者がたとえ再就職中に賃金を請求しても、上記超過支給した時期と総債権行使の時期が賃金の精算する調整の実質を失わないほどに近接していて、さらに使用者が相殺の金額と方法をあらかじめ予告する等により、勤労者の経済生活の安定を害する恐れがない時には、使用者は上記超過支給した賃金の返還請求権を自動債権として勤労者の賃金債権や退職金債権等を相殺することが出来る。そして、このような法理は、使用者が勤労者に既に退職金名目の金員を支給していたが、それが退職金支給としての効力がなく、使用者が同金員相当の不当利得返還債権を有するようになった場合に、これを自動債権として勤労者の退職金債権等を相殺する時にも適用される。
一方、民事執行法第246条第1項第5号は、勤労者である債務者の生活保障という公益的・社会政策的理由から「退職金その他これと同様の性質を有する給与債権の2分の1に該当する金額」を差押え禁止債権として規定しており、民法第497条は差押え禁止債権の債務者は相殺をもって債権者に対抗できないと規定しているので、使用者が勤労者に退職金名目で支給した金員相当の不当利得返還債権を自動債権として勤労者の退職金債権を相殺することは退職金債権の2分の1を超過する部分に該当する金額に関してだけ許容されると見るのが相当である。」
(2011.11.29 記述、判決文翻訳 弁護士高初輔)

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