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弁護士による韓国法律情報9-1 【韓国労働法(退職給与保障法)1】

※注意事項 下記の韓国法律情報を作成した時期により、既に法令や判例が改正・変更されていることもありますので、実際の事案に下記韓国法律情報を利用する時には必ず当事務所にご相談ください。下記情報を利用した結果についていかなる責任も負うことは出来ませんので、その点ご了承のうえ利用して下さい。
 
今日は、韓国の労働法規の中で、退職金制度についての話題です。
韓国では、日本と異なり、勤労者退職給与保障法(2005.1.27法律第7379号。この法律制定以前は勤労基準法(日本の労働基準法に当たります。)の第34条に同旨の規定がありました。)で退職金の支給制度が定められています。この法律により、1年以上継続して勤務した勤労者に対して、30日分以上の平均賃金を退職金として支給しなければならないことになっています(同法8条第1項)。勤労年数1年につき30日分の平均賃金の退職金が支給されます。端数月や端数日がある場合は、次のような計算になります。
【勤労年数+(端数月の月数÷12)+端数日の日数÷365】×30。
日本から韓国に進出し、事務所や支店を有し、勤労者を雇用している会社にとっては、退職金制度に対する理解は不可欠であり、守らなければならない制度の1つとして押さえておかなければなりません。
今回紹介する大法院判例は、この退職金制度に関連して、退職金を毎月支払う月給の中に退職金相当分を含めて支払っていた場合、そのような退職金分割支払約定が有効かという問題を扱った判例です。この判例自体は旧勤労基準法第34条の問題として論じていますが、現行の法律では、勤労者退職給与保障法の問題に引き直して、同様に理解すれば良いと思われます。勤労者退職給与保障法の条文に引き直して言うと、同法第8条第1項に退職金支払義務が規定され、同第2項に下記判例で論じられている退職金中間精算規定があります。
結論からいうと、このような退職金分割支払約定は、原則として無効であると判断されましたので、このような支払方法を取っている企業等は注意した方がよいでしょう。
大法院2010.5.20.宣告2007タ90760全員合議第判決(退職金分割支給約定事件)の判決要旨(1)は次の通りです。
「(1)(多数意見)使用者と勤労者が、毎月支給する月給や毎日支給する日当と共に、退職金として一定の金員をあらかじめ支給することと約定(以下、「退職金分割約定」という。)したとすれば、その約条は旧勤労基準法(2005.1.27法律第7379号により改正される前のもの)第34条第3項前文所定の退職金中間精算と認定される場合でない限り、最終退職時に発生する退職金請求権を勤労者が事前に放棄するものとして、強行法規である同法第34条に違背して無効であり、その結果、退職金分割約定により、使用者が勤労者に退職金名目の金員を支給したとしても、退職金支給としての効力はない。そこで、勤労関係の継続中に退職金分割約定により月給や日当とは別途に実質的に退職金をあらかじめ支給することにした場合、これはどこまでも上記約定が有効であることを前提としたものであるところ、それが上記のような理由で退職金支給としての効力がないとすれば、使用者は本来、退職金名目に該当金員を支給する義務があったものではないので、上記約定により、既に支給した退職金名目の金員は、同法第18条所定の「勤労の対価として支給する賃金」に該当すると言うことは出来ず、このように使用者が勤労者に退職金名目の金員を実質的に支給したにもかかわらず、本来退職金支給としての効力が認定されないばかりでなく、同法第18条所定の賃金支給としての効力も認定されないとすれば、使用者は法律上の原因なしに、勤労者に退職金名目の金員を支給したものとして、上記金員相当の損害を被った半面、勤労者は同金額相当の利益を得たわけになるので、勤労者は受領した退職金名目の金員を不当利得として使用者に返還しなければならないと見るのが公平の見地から適当である。」
 
上記判例では退職金分割支払約定は無効であるとされましたが、本件ではそのような支払は法律上の原因を欠くものとして、会社側の労働者に対する不当利得返還請求権が認められました。しかし、ケースによっては、不当利得返還請求権が認められない場合もありますので、この点、韓国に事務所等を設置し、労働者を雇用している日本の会社等は、十分注意する必要があります。
(韓国法律情報9-2 韓国労働法(退職給与保障法)へ続く)
(2011.11.28 記述、判決文翻訳 弁護士高初輔)

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