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今回は会社法に関する大法院判決をご紹介致します。
日本でも見受けられるところですが、ジョイントベンチャーで合弁会社を作るときに、株主間において、もしくは株主と会社間において、株式の譲渡を禁止、制限することがあります。
このような約定の有効性についての韓国大法院の判決をご紹介しますが、その前に、韓国商法における株式譲渡に関する規定について簡単に説明しておきます。
韓国商法335条1項によれば、「株式は他人にこれを譲渡することができる。但し、株式の譲渡は定款が定めるところにより理事会の承認を得るものとすることができる。」と規定されています。つまり、株式の譲渡は原則として自由ですが、定款で理事会の承認を要件とする旨の制限をすることができます。
それでは、以下に大法院の判決文(大法院2000.9.26宣告99?48429判決 名義書換手続履行)を記載しますが、同判決の事案の内容は(簡略に説明すると)、株主らが被告合弁会社を設立することになったところ、株主間及び株主と合弁会社間においてそれぞれ株式譲渡を5年間禁止する約定をしましたが、ある株主がその約定に違反して原告に株式を譲渡し、原告が合弁会社に名義書換を請求したところこれを拒否されたという事案です。
判決文の内容は以下のとおりで、結論的には大法院はこのような株式譲渡制限約定は無効であると判示しています。
「1.本件譲渡制限約定の効力に関して
商法335条1項は、株式は他人にこれを譲渡することができる、但し、株式の譲渡は定款が定めるところにより理事会の承認を得るようにすることができると規定している。しかし、このような商法335条1項但書は株式の譲渡を前提にして、ただこれを制限する方法として理事会の承認を要するものと定款に定めることができるという趣旨であって、株式の譲渡それ自体を禁止することができる旨定めることができるという意味ではないため、定款の規定で株式の譲渡を制限する場合にも株式譲渡を全面的に禁止する規定をおくことはできないというべきである。
原審が第一審判決を引用して適法に確定した事実関係によれば、被告会社Yと株主らは1994年6月3日、本件合弁投資契約時に、そして株主らを代理した訴外株式会社Aと訴外株式会社Bは、1994年9月4日投資約定時に、被告会社Y発行株式の譲渡制限に関して“合弁会社(以下「被告会社」という。)が事前に公開される場合を除いて合弁会社の設立日から5年間、合弁会社のいずれの株主も合弁会社株式の全部または一部を他の当事者または第三者に売却、譲渡することができない。但し、法律上または政府の措置によりその株式の譲渡が強制される場合、または当事者ら全員がその譲渡に同意する場合は例外とする。上記例外の場合や設立日から5年が経過した後、合弁会社の公開以前まで訴外株式会社AやC会社以外の株主が保有する合弁会社の株式の全部または一部を譲渡しようとする場合には、訴外株式会社AとC会社が株式買入時の各自の株式保有比率により同株式を優先買受けする権利がある。このとき譲渡人はまず訴外株式会社AとC会社に書面で同株式の譲渡を請約(申し込み)しなければならず、その譲渡価額は合意された価格または鑑定による公正価格とする。上記契約による株式の譲渡制限に違反して合弁会社の株式が譲渡された場合、その株式譲受人は上記契約による如何なる権利と利益も有するものではなく、その株式の譲渡人は本契約及び上記合意書等の書面による約定及び義務に対して継続して責任を負う。”という内容の合意をしたものである。
しかし、本件約定は、その内容自体によってもその譲渡に理事会の承認を得るものとするなど、その譲渡を制限するものではなく、設立後5年間一切株式の譲渡を禁止する内容であって、このような内容は上記でみたように定款で規定したとしても、これは株主の投下資本回収の可能性を全面的に否定するものとして無効というべきである。したがって、そのように定款で規定しても無効となる内容をさらに会社や株主ら間で、もしくは株主らの間で約定したとしてもこれもまた無効というべきである。
そして、本件約定中、株主全員の同意があれば譲渡することができるという内容があるが、これもやはり商法335条1項但書所定の譲渡制限要件を加重するものとして商法規定の趣旨に反するばかりでなく、事実上譲渡を不可能にするか著しく譲渡を困難にするものとして実質的に譲渡を禁止したのと異なるものではない。したがって、本件譲渡制限約定は無効というべきであり、被告はそのような無効な譲渡制限約定をもって本件名義書換請求を拒否することはできないのである。
原審の判断はその理由説時において多少明確でない点があるが、本件譲渡制限約定の効力を否定した結論においては正当である。この点、上告理由は受け入れることができない。」
(2009.9.24 記述、判決文翻訳 弁護士高初輔)