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弁護士による韓国法律情報 【韓国著作権法1】

※注意事項
下記の韓国法律情報を作成した時期により、既に法令や判例が改正・変更されていることもありますので、実際の事案に下記韓国法律情報を利用する時には必ず当事務所にご相談ください。下記情報を利用した結果についていかなる責任も負うことは出来ませんので、その点ご了承のうえ利用して下さい。

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このコーナーは、韓国の法律情報、その中でも大法院(最高裁判所)をはじめとする裁判所(韓国では法院といいます。)の判例を中心に紹介をしていくコーナーです。

第1回目は、韓国の有名歌手がその氏名ばかりでなく、特徴的な外見や独特な行動までも模倣された事件を紹介します。

この事件は、被告人が、①「パクサンミン(박상민)」という韓国の有名歌手の外見と独特な行動を真似してナイトクラブで模倣公演をしたこと、②自分が「パクサンミン(박상민)」であるとして公演し、客の求めがあれば、本物のパクサンミン(박상민)の書体を真似てサインをして本物のように振舞ったことについて、不正競争防止法違反に問われた事件ですが、大法院は、被告人が有名歌手の氏名を詐称し、本物の名前でサインをするなど、本物のように振る舞ったことは不正競争防止法違反であるが、帽子やサングラスを着用したり、独特のひげを蓄えるなど有名歌手の外見を真似たことは、有名歌手の独特な外見自体は不正競争防止法上の営業標識に該当するとみることは困難であるため、不正競争防止法違反に該当しないと判断しました。以下に、大法院の判決理由をあげておきます。

なお、歌手はいわゆる実演家として著作隣接権を有しますが(韓国著作権法では実演家は複製権を有します。韓国著作権法第69条。)、著作物の場合と異なり「模倣」は複製に該当しません。したがって、有名歌手の実演行為を真似すること自体は複製権侵害にはならず、場合によってパブリシティ権その他不法行為の成立があり得ます(이해왕著。「著作権法」525頁以下参照。)。ちなみに、日本の著作権法上、実演家には複製権ではなく、もう少し狭い録音録画権が認められていますが(日本著作権法第91条)、日本の場合も物真似には録音録画権は及ばないと考えられており、その態様によって不法行為の成立があり得ます(中山信弘著。「著作権法」430頁参照。)。

*韓国大法院2009.1.30宣告2008도5897判決

「原審は他人の外見と他人の独特な行動それ自体は単に無形的であって、可変的な印象ないしイメージに近いものであり、何らかの事物を他の事物から区別されるようにする固定的な徴表としての機能が少ない点、このような特徴的な外見と行動まで営業標識とみてこれを利用する行為に対して不正競争防止及び営業秘密保護に関する法律違反(以下、“不正競争防止法”という。)として処罰するとすればこれは結果的に人の特定の外見等に対してまで特定人の独占的な使用を事実上容認することとなり、何らかの営業標識に対して投じた多くの努力及び投資ならびにそれによって一般人に広く知られた成果を保護して無賃乗車者(ただ乗り)による競争秩序の歪曲を防ぐことにその目的がある不正競争防止法の立法趣旨とは距離がある点、被告人1が帽子とサングラス等で歌手パクサンミン(박상민)の外貌と似せて装い、いわゆるリップシンク方式で歌を歌う行為は混同発生判断の資料として評価することが相当である点等を考慮して、姓名以外に歌手パクサンミン(박상민)の外見等は不正競争防止法でいう営業標識に該当しないと判断したところ、これは正当なものとして首肯することができ、そこに上告理由が主張する法理誤解等の違法はない。」

(記述、判決文翻訳 弁護士高初輔)

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