※注意事項 下記の韓国法律情報を作成した時期により、既に法令や判例が改正・変更されていることもありますので、実際の事案に下記韓国法律情報を利用する時には必ず当事務所にご相談ください。下記情報を利用した結果についていかなる責任も負うことは出来ませんので、その点ご了承のうえ利用して下さい。
今回は、2011年4月14日に改正された韓国商法(2012年4月15日施行)について簡単に説明をします。今後韓国への進出を考えている企業、あるいは既に韓国に進出している企業にとっては、関連の深い問題だと思いますので参考にして下さい。韓国商法の改正に関する問題についてご質問等があれば、当事務所の法律相談をご利用下さい。
1.新しい企業形態の創設
新しい企業形態として2つのものを創設しました。
1つは合資組合といい、もう1つは有限責任会社と言います(86条の2以下、86条の9、287条の2以下、287条の45)。
前者は会社ではなく業務執行組合員と有限責任組合員で構成されるものです。後者は社員全員が有限責任を負う会社です。
2.執行役員制度の新設
執行役員を会社法上の機関とした上で、これを導入するかどうかは会社の自律的な決定に委ねました(408条の2以下、408条の9)。
3.遵法支援人新設
一定規模以上の上場会社は遵法支援人を置くこととなりました(542条の13)。
4.理事(既に述べたことがあると思いますが、韓国商法では取締役のことを理事といいます)の責任軽減制度新設(400条2項、415条)
代表訴訟が活発になっている現状に対応したものです。軽過失による損害賠償責任を軽減することのできる制度です。
5.理事と会社との利益相反防止措置の強化
理事と会社との利益相反を防止するために、自己取引の承認要件を強化し、さらに「会社の機会流用」を防止する措置を講じ、自己取引の制限対象者を理事の他主要株主や特殊関係者にも広げました(397条、398条、397条の2、)。
6.種類株式の導入
企業にとって効率的な資金調達と経営権防御に活用できるようにするため、種類株式制度の拡充を図りました。
(1)従前、優先株についてだけ無議決権株を認めていた改正前370条を廃止し、普通株にも無議決権株や議決権制限株を発行できるようにしました(344条の3)。なお、それらの無議決権株及び議決権優先株の発行可能株式数については制限があります。
(2)株主が償還請求できる償還株式(345条3項)や会社が転換権を行使することができる転換株式(346条2項)を新設しました。
7.自己株式の規制緩和
配当可能利益の範囲では無制限に自己株式を取得することができるようにしました(341条)。なお、配当可能利益の範囲を超える分については、従前の自己株式取得禁止原則が維持されています(341条の2)。
8.無額面株式制度の新設
無額面株式を導入しました(451条2項)。
9.財務関連制度の改正
会社の計算に関し、企業の便宜のための改正をしました。条文だけ挙げておきます。
452条、453条から457条の2、449条の2、462条2項、462条の4、461条の2。
10.合併対価の柔軟化
合併について存続会社が消滅会社の株主に対価の全部もしくは一部として金銭やその他の財産を提供することができるようにしました(523条4号等)。
11.社債制度が改善されました。
2011年改正前の471条から473条が廃止され、469条2項、480条の2により社債制度が改善されました。
12.強制株式売渡・買取請求制度の新設
支配株主が会社の発行株式総数の95%以上を確保している状況において、支配株主が少数株主に対して株式の売渡しを請求できる権利を認めるとともに、少数株主の方から自身の所有株式を支配株主に対して買取請求することができる権利を認めました(360条の24、25、26)。
(2013.1.18 記述 弁護士高初輔)