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今回は2012年施行の韓国商法(会社法)における株主総会の規定ぶりについて説明します。ここで会社とは、特に断らない限り株式会社を指すものとします。
韓国の会社法では原則的一般的な会社法の規定が適用される大規模な会社と規模の小さい小規模会社という二つの区分けがあります。小規模会社というのは商法上の用語ではありません。商法上は資本金総額が10億ウォン未満の会社について会社組織と手続の簡素化を認めており、このような会社を実務上小規模会社と呼んでいます。以下においては、便宜上小規模会社でない資本金総額が10億ウォン以上の株式会社を非小規模会社といい、資本金総額が10億ウォン未満の株式会社を小規模会社ということにします。株主総会についても非小規模会社と小規模会社とでは規定ぶりが異なっており、小規模会社には、その規模にみあうよう組織、機関を簡素化し手続を簡便化する特例が認められています。
それではまず、非小規模会社つまり一般の会社の株主総会はどのような規定ぶりになっているか見てみましょう。
株主総会の召集は商法に他の規定がある場合を除いて理事会が決定します(362条)。
株主総会を開催するには、まず理事会の召集決議が必要です。理事会が株主総会の日時、場所、議案等を定めて、代表理事が株主に書面で通知、公告することになっており(363条1項、3項)、通知は会日の2週間前、公告は3週間前にしなければなりません。以上の召集手続に法令や定款に違反する瑕疵があった場合はどうなるのでしょうか。次の二つの場合があります。
1 召集通知の手続に瑕疵があった場合 株主の同意があれば治癒されます。
2 理事会の召集決議に瑕疵があった場合 理事会の召集決議が全然なくても株主全員が出席して同意すれば治癒されます(大法院判決1993.2.26)。一人会社では一人の株主の出席によりすべての瑕疵が治癒されます。株主総会を開いた事実がなくても、一人株主が決議したものとして議事録が作成されていれば、株主総会の決議があったものとみるのが判例の立場です(大法院判決1993.6.11)。
2のような見解については反対する学説もあります(李哲松 第20版505頁)。
それでは、株主の同意がなく治癒されない場合はどうなるのでしょうか。
通常は決議取消事由になると考えられますが、最初から理事会決議がなかった場合は決議不存在事由になるとみる学説もあります。しかし判例はその場合も、正当な召集権者により召集されたものであれば決議取消事由に過ぎないという立場をとっています(大法院判決1987.4.28 2009.5.28)。
次に小規模会社の株主総会はどうなっているかを見てみます。
小規模会社の最大の特徴は、理事を一人又は二人にすることができ、監事をおかないことができるという点です(383条1項但書、409条4項)。このため小規模会社には理事会がなく、理事会の権限を他の機関がかわって行なうことになりますが、株主総会の召集決定に関する権限は代表理事が行なうことになっています(383条6項>362条・366条1項・412条の3 1項)。したがって、代表理事が単独で株主総会の召集を決定し、これを株主に通知します。
また、小規模会社では、書面による決議でもって株主総会の決議にかえることができます(363条5項前段)。さらに株主全員が書面で同意すれば、書面決議があったものと見なされます(363条5項後段)。ただし、書面決議といえども決議をすること自体は理事会(代表理事)が決定しなければなりません。
なお、小規模会社には上記のとおり理事会がありませんが、それは理事が一人又は二人のときだけであって、理事を三人以上選任したときは本則に立ち返って理事会を構成しなければならず理事会決議事項と定められているものは理事会が決議しなければなりません。
(2013.6.10 記述 弁護士高初輔)