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韓国会社・企業、外国企業のための日本法法律相談1 韓国親会社保証と準拠法・裁判地【銀行金融機関取引法1】

※注意事項 下記のQAを作成した時期により、既に法令や判例が改正・変更されていることもありますので、実際の事案に下記QAを利用する時には必ず当事務所にご相談ください。下記情報を利用した結果についていかなる責任も負うことは出来ませんので、その点ご了承のうえ利用して下さい。

<Q1>

 私は韓国に本店のある銀行の東京支店で貸付けを担当しています。当支店に、親会社が韓国にある日本現地法人から融資の申し込みがありましたが、これに対し、当支店では韓国の親会社が保証人になることを融資の条件にしようと考えています。韓国の親会社が保証人になった場合、親会社に対し裁判をするとしたら、日本と韓国のどちらの裁判所ですることになりますか。また、当支店と親会社との保証契約の成立や効力(内容)を決定する準拠法は、日本法ですか、韓国法ですか。

<A1>

1 当支店が親会社に対して保証債務の履行を請求して裁判をする場合に、日本と韓国のどちらの裁判所に訴訟を提起すればよいかという問題を国際裁判管轄(万一紛争が生じた場合、どこの国の裁判所で裁判するか)の問題といいますが、当事者間で専属的国際裁判管轄の合意(日本か韓国のどちらか一方の裁判所のみで裁判をすることを合意すること)をしていないかぎり、当支店は日本と韓国どちらの国の裁判所でも任意の一方の裁判所に訴訟を提起できます。親会社は韓国に所在する会社ですから韓国で保証債務履行請求訴訟を起こせるのは当然ですし、また保証債務履行請求訴訟であるため、同訴訟は主債務者である日本現地法人に対する貸金請求訴訟を日本の裁判所に提起するときに、併合して提起することができます。

それでは、当支店は日本と韓国のどちらで裁判を提起するのがよいのでしょうか。以下この点について検討します。

 韓国の裁判所に提起することのメリット・デメリット

 ・韓国の裁判所で判決をとるから韓国親会社に対する強制執行のため外国判決の承認手続を取らなくてよい。

 ・送達に時間がかからない。

 日本の裁判所に提起することのメリット・デメリット

 ・子会社に対する裁判を提起するのに併せて親会社を被告に含めることができる。

 ・韓国で強制執行をするためには日本の裁判所の判決を韓国の裁判所で承認してもらう必要がある(韓国での強制執行となる場合)。

 ・訴状の送達に約6ヵ月、判決の送達に約6ヵ月の期間を必要とする(親会社への送達のため)。

以上の点からすると親会社に対しては韓国の裁判所に裁判を提起した方がよいと考えられます(特に送達の問題)。但し、韓国の親会社が日本に支店(日本における代表者が定められている)を有するときはその支店への送達が認められますので、日本の裁判所に提起しても送達の問題を生じません。

2 次に、準拠法(当支店と韓国親会社との保証契約の成立や効力をどこの国の法律を適用して決定するか)の問題を検討します。

 日本で裁判をする場合……日本で裁判をする場合、保証契約の成立及び効力の準拠法については、原則として、まず当事者の意思に従い、当事者の意思がはっきりしていないときは、行為地法によります(法例7条1項、2項)。保証契約における行為地とは、保証の申込の通知を発信した地(韓国)のことを言います(法例9条2項)。従って、当事者が準拠法を決めなかったときは、韓国法が準拠法になる可能性が高いと言えます。但し、保証債務は主債務に付従することから、主債務の準拠法(日本法)による旨の黙示の合意が認定される可能性はあります。その場合は主債務の準拠法(日本法)が保証債務の準拠法となります。

しかし、平成19年から「法例」が廃止されて、その代わりに施行される「法の適用に関する通則法」によれば、当事者の準拠法選択がなければ韓国法が準拠法となる可能性が高いと思います(同法8条2項)。

 韓国で裁判をする場合……韓国の国際私法上、契約は当事者が明示または黙示的に選択した準拠法が適用され(韓国国際私法25条)、もし当事者が準拠法を選択しない場合には、この契約ともっとも密接な関連がある国の法律が適用されることになります(同法26条1項)。保証債務は主債務に付従することから、主債務の準拠法(日本法)による旨の黙示の合意が認定されたり、主債務の準拠法である日本法がもっとも密接な関連がある国の法律であると判断される可能性はあります。

  以上のとおり本件の保証契約については、日本法と韓国法のどちらも準拠法となりうる可能性があり、日本法と韓国法とでは法律の内容に多少異なる点もありますが、概ねどちらでも問題はないものと思われます。ただ、どちらを準拠法にするかは明示的に定めておいた方がよいと思います。

なお、2012年12月7日現在において日本法では、保証契約は書面でしなければ効力を生じないものとされていることに注意して下さい(日本民法446条2項・3項)。

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