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韓国会社・企業、外国企業のための日本法法律相談17 建築工事代金に基づく商事留置権について【銀行金融機関取引法14】

※注意事項 下記のQAを作成した時期により、既に法令や判例が改正・変更されていることもありますので、実際の事案に下記QAを利用する時には必ず当事務所にご相談ください。下記情報を利用した結果についていかなる責任も負うことは出来ませんので、その点ご了承のうえ利用して下さい。
 
A氏 外国銀行東京支店の職員
B弁 同社顧問弁護士
 
A氏 当行の取引先Y社が経営不振に陥り、債務の支払を長期間滞ったため、Y社所有の土地に対する根抵当権(登記済)に基づき、土地の競売を申立てました。根抵当権設定時にはその土地は更地だったのですが、根抵当権設定後にY社が建築業者Z社に建物建築工事を発注し、Z社が同土地で建物新築工事に着手し、鉄骨を組み上げ、床にコンクリートを打って上棟までやりましたが、まだ壁はない状態で、当社の競売申立後、工事は中断されました。Z社が競売手続の中で本件土地について工事請負代金債権を被担保債権とする商事留置権を主張したところ、評価人がそれを前提に評価したため、土地の価額は10万円と評価され、当行に配当されるべき剰余を生じる見込みがない(無剰余)とのことで、競売手続が取り消されてしまいました。どうすれば良いでしょうか?

B弁 裁判所の競売手続取消決定に対して執行抗告を申し立てるべきです。

A氏 その執行抗告ではどのようなことを主張すれば良いのでしょうか?

B弁 本件では、建築工事請負代金債権を被担保債権として土地に対する商事留置権が成立するかどうかが争点となりますが、これについては判例・学説ともに色々見解が分かれています。現時点においてはまだ最高裁の判断は出ていないものの、方向性がほぼ定まりつつあるのではないかと思われる状況です。
 本件のように優先する根抵当権者がいる場合には、理屈はともかくとして、土地に対して建築業者の請負代金債権に基づく商事留置権の発生は認めない方向で固まってきていると考えられます。特に、本件のように建築工事が中断され、建物が完成していない場合は、とりわけその可能性が高いと思われます。すなわち、この場合、そもそも土地に対する商事留置権の成立を否定する見解、もしくは土地に対する商事留置権の成立は認めつつ、根抵当権者(及び買受人)への対抗力を否定する見解の2つの考え方がありますが、どちらにしても根抵当権者及び買受人に対する関係で留置権の効力を否定する方向性に収れんしつつあると思います。したがって、この点をとらえて、取消決定に対し執行抗告を申立て、取消決定自体を取り消してもらえば良いと考えます。その上で再度競売手続において適正な評価をしてもらうことになるでしょう。(参考判例:平成22年9月9日 東京高裁決定等)

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